筆写 ~ 伊藤野枝『感想の断片』より

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この筆写文章のあとには、

「一番自分にとつて苦痛であったのも

 それである。」

という一文が続いています。

私、この文章には共感を覚えました。

これが表現するもの以上でも以下でも

なく、その通りの感覚です。

と同時に分かってきたことがあって、

『思考』というものに傾倒するほどに

内心の争闘も起きやすく、苦痛や

心地悪さも生じやすくなるという、

自分の中の感覚です。

物理で作用反作用の法則というものを

習いましたが、作用があれば、そこに

必ず反作用というものが生じるという

感じで、自身の都合良き具合に思考を

するがゆえに、その反作用的な感覚も

生じてしまう、というように思って

います。

ということであるからこそ、

たとえば書写でいうと

「うまく書こう」

「早く上達しよう」

などという思考を持ちすぎて

筆写に取り組んだりすると、

その反作用的な感覚として

「うまく書けない」だの

「なかなか上達しない」だのと

いった思いが生じやすくなる、

というのが私の経験です。

大脳は人間らしさをつかさどると

言われますが、私としてはもっと

小脳的に諸々の行いを進める方が

良いというのが現時点での結論です。

筆写文章

いまかうしていろ/\な事件の

あつた過去をふり返るとき

一番自分を導いて教へたものは

私自身の内心の争闘である。

  伊藤野枝『感想の断片』より