賣卜先生糠俵 ~孝行(二)~

前回のお話の続きです。

 ※ルビは現代仮名遣いにしてます

 ※[ ]は、変体仮名の元となる漢字です

これ佐平治孝行さへいじこうこうとて世間せけんに ※前頁分)

まゝある孝行なり

むか[可]し人のいわく

は[八]かたんとうつべか[可]らず[須"]

まけまじと打べ[遍"]し

親には[爾八]気に[爾]あう

すべか[春遍"可]らず[須"]

そむかじとすべしとなり

背かじとする[類]孝行は[八]影日向かげひなたなし

あわふとす[春]る孝行は[八]拵物こしらえものに[爾]て

さきに[爾]所謂いわゆる佐平治孝行なり

かくいへば[八"]とてなんじ不孝ふこう

そしるに[爾]あらず[春"]

孝行は[八]真似まねでもすべし

或國あるくに大守たいしゅかりに[爾]出給いでたまいしとき[起]

老母ろうぼひてすぐるものあり

大守見給みたま其故そのゆえといたま

さと人のいわく彼れは[連八]

平生へいぜい孝行には[爾八]なき[起]ものなり

大守孝子こうしには[爾八]御褒美ごほうびを給ふときく

老母をおいて孝行をせ御褒美を

むさぼるえ[恵]せものなりこた

人をかえて問給ふに[爾]こたえまた[多]さきごと

大守のいわく世上せじょうには[爾八]あしき真似を

する[類]者多し

彼れは[連八]善き[起]真似をする者也とて

御褒美数多あまたたまわりぬ[怒]

大守の仁徳じんとくに[爾]感じ

かのえ[恵]せ者まこと孝子こうしに[爾]

なりしとか[可]や

終わり