筆写 ~ 竹内浩三『しかられて』より

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しかられて

外へ放り出されたことはあっても

自ら出ていったことはない。

子供の私を抱えて放り出すのは、父。

時間がたって、やがて迎えて入れて

くれるのは、母。

父親としての怖さ、厳しさを

損なわないために、

父自身が迎え入れなかったの

だろうか??

ところで今の私には、

怖さ = 厳しさ(厳格さ)

とは、決して結びつかない。

そして、大人になった私と妹から

「よくもまぁ、理不尽に怒られたもんや!」

と、思い出すたびつっこまれている

現在の父親である(笑)。

その当人はヘラヘラ笑って

何もなかったかのように振る舞っている。

筆写文章

しかられて

外へは出たが

我家から

夕餉(ゆうげ)の烟(けむり)と

灯火(ともしび)の

黄色い光に

混ぜられた

たのしい飯(めし)の音がする

  竹内浩三『しかられて』より