筆写 ~ 寺田寅彦『ルクレチウスと科学』より

寺田寅彦『ルクレチウスと科学』をペン字で
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当たり前のようで、しかし言葉にすると

改めて納得させられる、とても面白い

文章です。

ところでいつの頃からか、ヒトは

時間という概念に縛られたかのように

生きてきている、そんな気がします。

勝手な想像ですが、そんな概念が

根強くなかったかもしれない

太古のヒトは、言うなれば

「時間の流れに身をゆだねる」

という感覚で生きていたのでは

ないかなと思えます。

もちろん、今でもそのような感覚で

過ごしていらっしゃる方も

少なからずおいででしょう。

この「身をゆだねる」ということに

何かしら不都合を感じるのが

ヒトの社会の宿命なのかもしれません。

それゆえか、世の中は何かしら

ギクシャクしているように思えて、

それがいささか残念な気もします。

私ももちろんその一員です。

それが

” ヒトという生き物の自然な姿 ”

なのかもしれませんが、

目に入ってくる小鳥や猫たちの

生き方は実直かつ素朴にして、

そこにある種の穏やかさを感じずには

いられないのです。

自然界を『厳しい生存競争』などと

表現するのは、身をゆだねるという感覚

から離れすぎたヒトという動物ならでは

のものだと私は思っていて、

彼らの世界は、やはり何か自然な

穏やかさを含んでいるように感じる

のです。

筆写文章

「物の運動と静止を離れて時間を

感ずる事はできない」という言葉も、

深く深く考えてみる価値のある

一つの啓示である。

  寺田寅彦『ルクレチウスと科学』より