筆写 ~ 山本周五郎『石ころ』より

山本周五郎『石ころ』より硬筆筆写 ペン字
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『石ころ』の最後の一節です。

ただ黙々と自分の信じる道を生きる

一人の男。その彼の打ち立てる功名と

手柄の象徴が「平凡」というのです。

思うに、平凡か非凡かというのは

何かと比べたときに生じる概念で、

己の信じる道だけしか見ていない

彼にはそのような概念の生じようが

ない、いや、彼の心情としては、

そのようにありたいという様子が

物語の中で語られています。

私はなんだかそこに、

「自由」というものを感じるのです。

筆写文章

やがて良人(おっと)が凱旋すれば、

そこにまた石が一つ殖(ふ)えることだろう。

人には見えないが多くの功名と手柄を

象徴する平凡な一つの石が・・・・・・。

  山本周五郎『石ころ』より