筆写 ~ 岡本綺堂『平家蟹』より

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稽古の先にゴールを置くのではなく、

稽古に入り続けることをゴールとしよう。

自分が感じたこと、考えたことを

書き留めて、時折見返すようにしている。

その中のひとつ。

おおかた何らかの理想を描くことにより、

人はその理想を手に入れるための練習

(=稽古)をする。

けれども私は、いったん稽古に取り組み

始めたならば、その考えを手放すように

現在は努めている。

稽古の先にゴール(=理想)を置くと、

私の場合、色んな要素が自らの感情に

揺さぶりをかける。

・未来への期待感

・現在と未来とのギャップに対する萎縮

・その未来にたどり着く時間の不透明感

・たどり着ける可能性への不安(懐疑心)

・他人への羨望や嫉妬

・・・・・・

このようなものに心を揺さぶられて

いては稽古の質も大したものにならない

し、何より限られた人生の中の大切な

時間に対する充足感にも欠けるだろう。

ただ、そういった要素がガソリンとなって

エンジンを回し続ける人もいるだろうし、

それは人によってまちまちだ。

いまの私は、何かを得るということよりも

いまこの時間を丁寧に、充足感を得るような

生き方に焦点を当てていきたい。

そして、冒頭の考えに至った。

筆写文章

※原文でひらがな表記のところを

 筆写では一部漢字に書き替えています。

白きは源氏……

赤きは平家の旗の色…… 。

あかき甲にいかれる顔は…… 。

平家の方々のたましいが、

蟹に宿って迷いいずるか。

  岡本綺堂『平家蟹』より