筆写 ~ 柳宗悦『雑器の美』より

柳宗悦『雑器の美』をペン字で
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器は見るのは楽しいです。

今年も、滋賀県の信楽で開かれた

信楽作家市を訪れました。

とはいえ、家にある器は

割れたりしない限り捨てることもなく、

また収納する場所もないため、

素敵な器を見てもなかなか

購入に至ることはありません(笑)

私のお嫁さんは器大好きで、

それこそ以前は自分で作っていました。

彼女が作った器たちの一部は今も

日々の食事を美味しく彩ってくれて

います。

専門家のように器の芸術的価値を

見る目を私は持ちませんが、

器を作る人が描くイメージと

人の制御が及びにくい窯(かま)の中で

起こる反応との、ある種偶然的な

組み合わせにより、色々興味深い

表情が出てくるのかなと思います。

そう考えてみると、筆写にも

似たようなところがあるかも

しれません。

基本的には自分の身体を使って

仕上げるものなので、

描いたイメージに沿って

繊細な制御ができそうですが、

身体というのは実際にはなかなか

思うように動かないものです。

そこで精緻な技巧を求めていく

のもアリですが、描くイメージと、

実際にペンを走らせた時の

ある程度の偶然性との組み合わせ

によって生まれてくる字の色々な

表情を心穏やかに受け入れてあげる

ことができれば、私にとってそれは

理想的な書写です。

『理想的』なので、私はまだ及ばず

の身ですが、そんなことを考えながら

ペンを持った週末でした。

筆写文章

風土と素材と製作と、

是等(これら)のものは

離れてはならぬ。

一体である時、

作物は素直である。

自然が味方するからである。

  柳宗悦『雑器の美』より