筆写 ~ 永井荷風『来青花』より

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漢数字『一』と『奇』の字間は

もう少し大きくとるべきだったが

気が抜けていた。

中心、字間、字粒

そして全ての素となる一つ一つの筆画に

どれだけ丁寧に向き合い続けられるか。

その向き合い方の集大成が

筆写の仕上がりとして現れる。

ただでさえ雑念入りやすいものだから、

漢字や字数が多い文章になると

最後まで丁寧を通すことに

まっこと苦労する(笑)

修行、修行・・・

筆写文章

来青(らいせい)山人

往年 滬上(こじょう)より

携へ帰られし江南の一奇花(きくわ)、

わが初夏の清風に乗じて

盛に甘味(かんみ)を帯びたる

香気を放てるなり。

  永井荷風『来青花』より