筆写 ~ 泉鏡花『沼夫人』より

泉鏡花『沼夫人』より 万年筆で筆写
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月や水面のある情景は、

特に具体的な描写や解釈を得ずとも

なんとなく美しく思えてくるので、

不思議なものです。

想像のなせる業というものですね。

明瞭さに感じる美、

曖昧さに感じる美、

美の感覚って一体なんだろ?

筆写文章

月の光が行通れば、

晃々きらきらもすそが揺れて、

両の足の爪先つまさきに、うつくしあやが立ち、

月が小波さざなみを渡るように、

なめらかに襞襀ひだを打った。

  泉鏡花『沼夫人』より