筆写 ~ 高村光太郎『美の日本的源泉』より

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丁寧でいて、素直にスッと走る線を

出したいが、なかなかそういかない。

近頃思うのだけれど、

何かを求めれば、それと同時に

その逆の概念が必ず生じてくる。

美を求めるがゆえに、醜の概念が出る。

こんなのはあくまでも人が作る概念であり、

そんな概念を取り払えば

本来、そこには美も醜もないのだが。

この概念を取り払った先にありそうな

心地よい筆写を目指したいが、

それはなんだか ガンダーラのような、

仏さんの境地のような気もする(笑)

筆写文章

民族の持つ美の源泉は実に深く、遠い。

その涌き出ずる水源は踏破しがたく、

その地中の噴き出口は人の測定を

ゆるさない。

  高村光太郎『美の日本的源泉』より